令和6年度の本試験を受験された皆様、本当にお疲れさまでした。
年々択一式試験が難化している傾向にありますが、令和6年度は特に健康保険法が難しい年となりました。
私は健康保険法にはそこまで苦手意識がなかったのですが、なぜか点数が伸びませんでした。
わかっているのにできなかった問題が多いという不思議な感覚です。
そう感じてしまうのにはちゃんと理由があり、これが本試験の健康保険法を難しく感じさせる原因です。
この原因について記事にしていきます。
なお、本記事は1人の社会保険労務士としての個人的見解となります。
出題方法について
健康保険法の出題方法
結論から言うと、本試験の健康保険法が難しく感じる原因は1問で出題される肢の論点がすべて異なり、ランダムだからです。
例えば、令和6年度 健康保険法 択一式の問1です。
問1 健康保険法に関する記述のうち、正しいものはどれか。
A:事業年度ごとの業績評価の論点
B:任継続被保険者の論点
C:派遣労働者の被保険者資格喪失の論点
D:保険医療機関の指定の論点
E:標準報酬月額の論点
健康保険法という大きな括りの中で、A~Eすべてテーマの違う論点の出題となります。
これは1問につき、脳のファイルを5つ開く作業となります。
全て別のファイルなので、知識の瞬発力が5回求められます。
これが本試験の健康保険法をとても難しく感じさせる最大の原因です。
また、論点が違うので他の肢と比較することで思い出すことや消去することもできず、知らない論点が本当に知らないのか、思い出せないのかも判断しにくいのです。
さらには、ただでさえ解答に時間がかかるのに、問題文も長く、異常に疲労感を感じます。
令和6年度の健康保険法はそもそも知らないであろう論点がとても多く、肢での比較もできずに、知っている肢のみでピンポイントに一本釣りするという非常に高度な能力を求められたのです。
誰が4350円なんか知ってんねん。
健康保険法の問題文は原則
「 健康保険法に関する記述のうち、正しい(or誤っている)ものはどれか。 」
と健康保険法の中の●●についてではなく、健康保険法の中すべてからランダムに肢を出題されます。
この出題方式は今年からというわけではなくずっとそうなのですが、他の科目と比較してもやはり健康保険法の出題の仕方はクセが強いのです。
実際に他の科目と出題方法を比較してみましょう。
労働分野の出題方法
労働分野は1問で問われるテーマは同じとなります。
例えば、令和6年度 労働基準法 択一式の問7です。
問7 労働基準法に定める就業規則等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
A:就業規則等に関する論点
B:就業規則等に関する論点
C:就業規則等に関する論点
D:就業規則等に関する論点
E:就業規則等に関する論点
労働基準法の中でも●●というテーマについて、A~Eすべて●●の論点になります。
これは1問につき脳のファイルは1つ、就業規則のファイルだけを開きます。
そして、そのファイルの中に入っている論点を5つ比較しながら回答することができるのです。
比較すると、
健康保険法は5つ別のファイルを開く作業
労働基準法は1つのファイルから5つ取り出す作業
となります。
これは全くの別物で、どう考えても前者の方が難しい作業なのです。
健康保険法と労働基準法では問題を解いた後の脳の疲労感が全く違うのです。
労働分野の法律は基本的には1問1テーマの出題となります。
脳内の1つのファイルから5つ取り出す中で、他の肢に引っ張られて思い出すことや比較することで感じる違和感によって正解肢を選ぶこともできます。
法律の中の1テーマで1つのファイルを開き、論点を5つ確認する方が間違いなく回答しやすいのです。
一般常識の出題方法
一般常識は労働分野と同じく1問で問われるテーマは同じとなります。
広すぎる一般常識の中から、例えば確定拠出年金について1問や、統計についての1問とテーマが決まります。
いや、まぁ一般常識でランダム出題されたらキレていいと思います。
ちなみに、令和6年度 一般常識 問10は「死亡に係る給付」というテーマがありながら、肢の法律がそれぞれ違うという一般常識だからこそできる横断的な出題に「これは美しい…」と少し感動しました。
ですが、これはポジショントークであって、問10はかなりの難問となり受験生はイラっとしたと思います。
なお、恥を忍んで正直に申し上げると、美しい…と感動しながら間違えたので私もイラっとしてます。
年金分野の出題方法
「 厚生年金保険法に関する記述のうち、正しい(or誤っている)ものはどれか。 」
「 国民年金法に関する記述のうち、正しい(or誤っている)ものはどれか。 」
これが原則的な出題のされ方です。
あれ、健康保険法と同じ出題の仕方ですね。
法律の中の●●についてというテーマもなく、ランダム出題のにおいがしますね。
でも、ご安心ください。
法律の大きい括りの中からランダムに出題されそうな問題文ですが、年金科目は基本的には1問1テーマとなっています。
年金科目は同じ社会保険分野の中でも健康保険法に比べてお上品でスマートな出題となり、得点しやすい理由は実はこれだったりします。
もし仮に、ランダム出題されると年金科目もかなり難解に感じるようになります。
健康保険法ランダム出題の対策
健康保険法は複雑な理論が多いわけでもなく「難解な科目」というわけでありません。
単元ごと、テーマごとに学習すればほとんどがきちんと理解できます。
同様に、本試験でもテーマ別に出題されれば、もう少し得点は伸ばせるはずです。
そうすると、健康保険法はやはりランダムな5肢に対応する知識の瞬発力が必要ということになります。
対策
- 普段からランダム出題で問題を解く
うん、ごめん、当たり前のことしか言えないわ。笑
よくある一問一答などのテーマ別の問題集は、順番で覚えていたりすることがあります。
順番やテーマ別に並んでいたらできるけど、順番変わったらできなくなることありませんか?
それです、それを対策することで、全く違ってくるのです。
デジタルをうまく活用する
このランダム出題を紙ベースの問題集で対策するのは実質無理かと思います。
だからこそ、うまくデジタルを活用してください。
私の使用したスタディングのスマート問題集ではランダム出題機能があります。
私はスマート問題集のなんとなく正解した問題、間違えた問題を仕分けし、科目別にランダム出題にして繰返し解いていました。
これはスタディングに限らず、他社予備校のサイトでも、社労士試験過去問サイトでも、社労士試験アプリでもこのランダム出題機能があります。
もし使ってないのであれば、健康保険法だけでも絶対にランダム出題機能をご利用ください。
順番通り、テーマ別に演習するのではなく、いきなり違う論点やテーマのランダム出題に対応することで知識の瞬発力を養ってください。
知らない論点について
知らない論点が出るから健康保険法は難しいんだ!とよく言われます。
はい、その通りですね。としか言えません。
そもそも、出題されたことのない論点の対策はできません。
出題されたことのない論点を通達から拾ってテキストに網羅しますか?
テキストを辞書くらい分厚くして、その隅のここに掲載してますと言われたいですか?
それくらいしか対策ができないのですが、そんな対策したいですか?
なんかちょっとキレてるっぽくなりましたが、正直に言ってどこの予備校講師であっても知らないような論点が毎年出ています。
どこの予備校講師であっても70問×5肢の350肢すべての確実な正誤判定はできません。
知らない論点の対策はできない。
知らない論点の肢はできなくてもいい。
というのが結論です。
毎年、今までに出題されたことのない新しい論点が出ます。
それを知らないのはあなただけではありません。
予備校講師含めて、誰も知りません。
知らない論点の肢があっても、その肢がわからないだけで、その問題が解けないわけではありません。
未知の問題が出題されるのが前提な時点で不安が消えることはありません。
その不安に既知の知識で打ち勝ってこその難関試験が社労士試験なのです。キリッ
誰が4350円なんか知ってんねん。
まとめ
本試験の健康保険法に感じる難解さ、違和感を、こうやってきちんと整理して認識していることが意外とできていなかったりします。
「健康保険法」は決して難しい科目ではありません。
それでも「本試験の健康保険法」が難しく感じるのは「1問で異なる論点5肢だから」です。
ここの対策をきちんとしましょう。
アプリ等のランダム出題機能で対策することができますが、
ランダム出題機能を使ってない人は結構いると思います。
ぜひご利用いただき、その機能をフル活用してください。
本記事は取り立てて特別なことは言ってません。
きちんと特徴を認識したうえで、とれる対策はきちんと取りましょう。
結びに、本記事の内容をパクるやつが絶対に出てくるなと思うくらい、すごくいい記事書いたなと自画自賛しているのですが、読者の皆様の感想はいかがでしょうか。
もしパクってるやつが発生したら教えてください。
少しでも健康保険法への苦手意識やトラウマがなくなることを願っています。
それでは。